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February 26, 2011

2.20ダスビ演奏会

もう一週間くらい経ってしまいましたが・・・

毎年恒例のショスタコ好きの集う祭に参加しました。
聴きに来ていただいたみなさま,スタッフでお手伝いいただいたみなさま,一緒に音楽を作り上げたみなさま,ありがとうございました。

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オーケストラ・ダスビダーニャ第18回定期演奏会
2011/2/20(日)すみだトリフォニーホール
指揮:長田雅人(常任指揮者)
曲目:アニメ映画「司祭とその召使いバルダの物語」の音楽op.36抜粋
   室内交響曲op,110a(バルシャイ編曲)
   交響曲第12番op.112
   (以上ショスタコーヴィチ作曲)
   ポルカ「観光列車」(J.シュトラウス作曲/ショスタコーヴィチ編曲:アンコール)

1stVn(2プルト表)で参戦。

○バルダ
「ショスタコ=暗い,難しい」という固定イメージを持った人には是非聴いていただきたい曲。
ショスタコーヴィチは本来とってもユーモアにあふれた人なのです。人生の苦悩がいかに人間に影響を与えるかを考えるとき,あたかもダイエット記事などの「使用前」という趣でしょうか。
今回は全曲を復元したビベルガン版からの抜粋。
ストーリーを考えると「デコピン」を入れたのはとても良かったのではないでしょうか。なにしろデコピンのためにあれこれ出来事が起きるわけですから。
ヴァイオリンは弾く曲も少なく,演奏の難易度もそれほど高くないので,曲のイメージ実現に注力しました。
どんな音がこの場面のこの音に最適か,というのは常に考えなければいけませんが,ストーリーがあるとより近づきやすくなります。マエストロおさPからも「リッチな音で」とか「優雅に」とかのイメージを言葉にした指示もありましたし,「マルカート」というような奏法の指示もありました。それをどう理解して,どんな音を出すかというのは奏者の想像力が要求されるところです。
自分なりにはけっこういい線行ったのではないかと思いますが,実際はどうだったでしょうか。

○室内交響曲
こちらは「ショスタコ=暗い,難しい」というイメージを抱くのに最適な曲。しかも弦楽合奏・・・。弦楽器奏者にとっては今回最も神経をすり減らす曲でした。
ただ弾くだけでもかなり難しいのに,パート内で音程やリズムを極限まで合わせるのは至難の業です。原曲の弦楽四重奏なら一人一パートですから,多少のことは「あれ?」くらいで通り過ぎるところも,弦楽合奏だとそうはいきません。合わせることへの意識が加わる分神経を使いますし,集中力をそちらに振り分けねばなりません。そのあたりのところが,かねこけんじ氏の評にあった「難しい曲だねぇ」というところにつながるのでしょう。
でも,現状で持てるものはかなり出せたと思いますし,得るものも大きかったと思います。
終楽章は言葉に表せない感情が凝縮された,非常に素晴らしい部分です。どこにもぶつけることのできない血を吐くような苦しみから「DSCH」への部分。ここでは私自身の同じような,誰にも助けを求められない,光の見えない苦しみの経験と重ねてしまいます。だから一つ一つの音に最大限の魂を込めるのです。一つ目,さらに強い二つ目,そして心が壊れる三つ目と分かつことのできない「DSCH」の音の上での結合。なんとつらく苦しいのか。
ppによる冒頭回帰は,壊れてしまった心が虚ろに漂っているのか。しかしそれでも,自身の運命に抵抗するかのように深く深く「DSCH」を刻み込むのは,軽々しくつらいとか苦しいとか言えません。まさに音楽のみが語ることのできる世界です。

○交響曲12番
ダスビにとっては2回目の演奏です。
1楽章はマエストロおさP曰く「革命への強靱な意志をもって」。決して朗々とした演歌調であってはいけないと。低弦が重戦車軍団となって響くのは,最近では最も強力だったかもしれません。
pやppは以前の演奏よりずっと雰囲気を出せるようになったのではないでしょうか。ダスビの音はダイナミクスについても,音の温度についても,良くなってきているのではないかと。
終楽章は人類の「夜明け」なのかそうでないのか。今回も議論がありましたが,「夜明け」だったとしても手放しでOKな夜明けではないだろうな,ということを最近感じています。前回12番を演奏した時とは,明らかに私の中の感覚は変わっていました。終楽章のホルンの裏の二分音符はどうしても強く弾けないのです。アタックをつけないのはもちろん,音の張りも弱く,エネルギーを低く,といった感じです。ものすごく神経を使って丁寧に弾きましたが,そんなことを考えていた人は他にいたのかいなかったのか。
結局ここでも言葉ではなんとも言えないのです。音楽のみが語れるなにがしかの真実があるはずです。数年前にはこんな(ブログ記事)ことを考えていましたが,今はまたちょっと違うというところです。
今回プログラムに「交響曲11番,12番,13番の共通性から考える12番の意味」みたいなことを書こうと思って止めたのですが,団長が似たようなことを書いていました。かぶらなくてよかったかも。

○アンコール
J.シュトラウス2世のポルカ「観光列車」をショスタコーヴィチが編曲したもの。原曲は以前市原フィルで演奏したことがある(ヴィオラだけど^^;)ので,曲のイメージはあった。
この編曲は原曲より短縮されていたりするが,中間部の警笛が演出付きで入ったし,雰囲気は出せたのではないだろうか。こういう軽いアンコールもなかなかいいものです。

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今回はちゃんと打ち上げも2次会まで参加。
「なんちゃってダスビ賞」というのをいただいたり,「やってなかったじゃない!」って怒られたり,私も意外と存在を認めてもらっているのだなあ,と思ったりしました。
毎回書いているけれど,次回はどうなるかな・・・

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