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February 13, 2010

2.11ダスビ演奏会

毎年恒例のショスタコ好きの集う祭に参加した。
聴きに来ていただいたみなさま,スタッフでお手伝いいただいたみなさま,そして一緒に音楽を作り上げた皆様,ありがとうございました。

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オーケストラ・ダスビダーニャ第17回定期演奏会
2010/2/11(木・祝)すみだトリフォニーホール
指揮:長田雅人(常任指揮者)
チェロ独奏:丸山泰雄*
曲目:映画音楽「ベルリン陥落」より
   チェロ協奏曲第2番*
   交響曲第6番
   (すべてショスタコーヴィチ作曲)

1stVn(2プルト表)で参戦。

○ベルリン陥落
 ショスタコーヴィチの駄作の代表のようにいわれることもあるこの曲。でも映画を見れば音楽の完成度の高さがわかるというものです。駄作なのは映画であって音楽にあらず。とはいっても,映画もソ連という国の国策映画としてはものすごい完成度です。なにしろ見終わったら「スターリンて偉大だ」と思わずにはいられないのですから(笑)
 それにしても,ソ連崩壊後しばらく経った時代に,日本という国でこの曲をこれだけ真面目に演奏するというのは奇跡的なことでしょう。終曲でスターリンのシーンの音楽を弾くときは「これをこんなに真面目に弾くなんて」という思いがして,なんだか愉快な気持ちになってしまいました。
 練習当初からOさぴーに指摘されていた「ユニゾンの音程!!」は最終的にはかなり改善されたと思いますが,もう少しいけたはず,というのもまた正直なところ。私自身,若干甘いところがあったというのは反省点です。でも,弦楽器のppの作り方など,以前よりずっと進歩したのではないでしょうか。

○チェロ協奏曲2番
 暗く,意味深な,きわめてショスタコーヴィチらしい曲。自身の60歳の誕生日のために,人生を織り込んだ曲を作った,というのはかなり信憑性が高いと思います。
 そして演奏はソロ,オケともにかなりの高難度。特に2楽章は高速で絡み合うリズムがオケを翻弄します。拍をとることに神経が行ってしまい,音楽の流れがギクシャクしたのではないか,というのが気になりました。このあたりを終演後かねこけんじ氏に聞いてみたところ,「間違えて池袋に行っちゃって3楽章からしか聴いていないんだよ」と言われました。うーん,残念。実際どうだったのでしょう?録音を聴くまでのお楽しみですかね。
 ソリストの○ぴょんは超人的な演奏でした。台に乗っていても伝わってくる振動が,いかに楽器を鳴らしているかを示しています。10度の響き,重音のグリッサンド,激しいピツィカート,曲芸のような音の跳躍など,完璧にこなしていたのは本当にすごいと思いました。もちろん深く,静かに聴かせるところはグッとくる音色です。近距離で聴くと弓が弦に当たる打撃音がかなり聞こえましたが,おそらく客席では楽器の鳴る音の方が勝って聞こえると思うので,客席ではかなりのものだったのではないでしょうか。もともとめったに演奏されない曲を,こんな凄まじいソリストで聴けた人はラッキーでしょう。
 2楽章のFgはかなりたいへんだったと思いますが,本番少し前から上手いことはまるようになって,すごいと思いました。それ以外の木管楽器も,ティンパニも,好演でした。
 私自身はそのリズムにやられ,一箇所飛び出してしまいました。練習ではほぼ完璧だったところなのですが,本番はどうもそういうところでミスしてしまいます。そんなことではイカンですね。
 アンコールは「馬あぶ」から「ノクターン」。短いながらもチェロの味わい深いソロが主役の曲です。協奏曲とは違った,しみじみと感じ入る音色を披露してもらいました。

○交響曲6番
 この曲はOさぴー曰く「葬送の曲」。1楽章が葬送。2楽章があって,3楽章が最終的に天国で,そこには死んだ人がみんないて,みんなでラインダンスを踊る。スターリンもヒトラーもジャンヌ・ダルクもみんないるんだそうです。そして最後に「ちゃーらっ!ちゃららっちゃっちゃっ!!!」と終わると。今回はそんな解釈を共有した演奏でした。
 私は1楽章終盤の,チェレスタ,ヴァイオリンのトリルに乗せてホルンが吹くところが好きなのです。
 1楽章の後半部分,意識は深いところに沈み,思考をゆっくりと停止していく。ひたすら鳴り続ける低音とトリル。チェレスタのトリルでその意識に刺激が与えられ,再び意識はゆったりと活動を始める。意識は目覚め,冒頭の感情を再度思い出す。しかしその感情はすでに過去のもの。やがて意識は再び深く沈んでいく。過去の記事から引用)
 とても切ない1楽章。Oさぴーの言った「墓碑の前でのどうしようもない感情」という言葉は,まさにぴったり来るもので,そんな音楽を余すところなく音にしてあげたいと思ったのです。
 2楽章以降はは1楽章のことなんか忘れてしまったような雰囲気。でも無理に忘れようとしているのかどうなのか。終盤の空気がそんな気分を反映しているような。
 肝心の演奏はやはり「走らない!ころばない!」が重要です。とにかく以前からずっと走る・ころぶが直らないダスビですから,今回もかなり走り・ころびでした。走ったりころんだりするポイントは決まっているのですから,そういうところをちょっと意識すれば変わると思うのですが。でもほとんどすべての人が曲を熟知しているので,それでなんとかなる,というのがダスビのいいところでもあり,悪いところでもあります。これを直してしまったらつまらないオケになってしまうのかもしれません。でもやはり,直したほうがいいんじゃないかと思ってしまいます。
 3楽章は1stVnは曲芸みたいなことをやらされます。これを大変そうでなく,しかもクリアに弾くのはなかなか大変です。スプリング・ボーゲンのテクニックを駆使し,素早いポジションシフトを実現し,前打音をきっちり聴かせるためのボウイングを的確に使用します。このあたりは○ぴょんの弦セクション練習が大いに役立ちました。これはこの曲だけでなく,今後の演奏にも役立つに違いないので,本当に大収穫でした。
 最後のみんなでラインダンスの決め!みたいなところは上手く決まったでしょうか?

○アンコール
 「モスクワ・チェリョームシキ」から「モスクワを疾走」と「コルジンキナの出来事」から「追跡」(白川編)を。どちらもとにかく爆演向き。しかも「追跡」は2回演奏。
 ダスビらしい爆音を鳴らしまくり,きっと弦楽器の音はかき消されていたことでしょう。弦楽器全員が最大音量を出しても,あの管打楽器には勝てないのだろうな,と思います。
 「モスクワを疾走」は,以前4番の前に「モスクワ・チェリョームシキ」の組曲を演奏した時の第一曲です。とにかく音楽が疾走します。1stVn も珍しく後打ちをやらせてもらえます。後打ち大好きな私としてはとても幸せでした。
 「追跡」は以前5番のアンコールで本邦初公開したものを,さらにオーケストレーションを派手なものに改訂した版。ちゃんと2度の「ハイッ!!」もシャウトします。1stVnは最初の「ハイッ!!」は弾く音があるのですが,もちろん弾きながらシャウトです。最後の「ハイッ!!」は弾かなくていいので,ちょっと客席向きでシャウト。いやー,楽しい曲です。
 おまけの話ですが,今回のアンコール,2曲とも珍しく1stVnに後打ちがたくさんあります。後打ち大好きな私は「頭打ちと後打ちは違う」と思います。理論的には同じなのかもしれませんが,音楽的には確実に違うと思います。だから,内声を愛する人は後打ちが得意,そうでない人は後打ちが苦手,という現象が起こるのだと思います。今回も1stVnで後打ちを上手くできなかった人がいるのではないか?と思ったりもします。

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 今年は財政難で金を払えないので打ち上げは欠席。考えてみたらダスビで打ち上げに出なかったのは14回出たうちで2回目。前回出なかったのも6番をやったときでした。6番と相性悪いのか?
 いよいよ来年こそ参加が怪しくなってきたが,どうなることやら。他のオケは全部我慢しているのだから,ダスビだけは死守したいんだけどな・・・

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