ダスバーと全国のショスタコファンにとって一年で最も熱い一日(たぶん),池袋は東京芸術劇場でのダスビ演奏会。
オーケストラ・ダスビダーニャ第12回定期演奏会
指揮:長田雅人(常任指揮者)
曲目:映画「ヴォロチャーエフ要塞の日々」のための音楽 Op.48
劇伴オーケストラのための組曲(通称:ジャズ組曲第2番)
交響曲第1番 Op.10
スケルツォ Op.1(アンコール)
(すべてショスタコーヴィチ作曲)
1stVnで出演。ダスビ特有の緊張感の中での演奏はやめられない。数年前に比べて団員個々を取り巻く状況が変化したことも原因して,以前のような演奏を期待して来た人には若干不満が残ったかもしれないが,それでも現状での最大限のものを出せたのではないかと思う。
○ヴォロチャーエフ
終曲の合唱が非常に素晴らしく響いていた。オケの最大音量がでかいこともあり,最後のffはちょっと埋もれてしまったかもしれないが,出だしからゾクゾクするような雰囲気で存在感バッチリ,まさに闘う男の心の襞までも表現したと思える歌唱だった。本番に最高の声を出したコール・ダスビの皆さん,ブラヴィーです。
2,3曲目は弦楽器全休なので,映画のシーンを頭に浮かべながら聴くことに専念できた。映画のほうは短く編集されているようだが,組曲は音楽を楽しむのに十分なもの。パルチザンの部隊が鉄条網を乗り越え装甲車も突入,日本軍を敗走させるシーン(日本人がこんな映画見てていいのか?(笑))で使われている部分は感動ものだった。音量,音圧,魂はいつもながらのソ連系ダスビサウンド。
個人的にはなぜか前日から突然間違えるようになってしまった箇所を本番でも間違えてしまったのが悔やまれる。
○劇伴オーケストラのための組曲
変わった配置での演奏だったが,1stVnには大きな変更がなかったので演奏しずらいということはなかった。それでも目の前でアコーディオンやらギターやらサックスやらが鳴っているというのは面白いものだ。チェロやコントラバスの人たちは横一列の配置だったが,相当演奏しずらかったのではないだろうか?終演後に金子建志氏と話したところ,この配置はストコフスキー(だったか?)がやったことがあるらしいが,実演で見たのは初めてだと言っていた。気になっていた聞こえ方については,ホールの特質によるものかもしれないが思ったより問題はなく,管楽器はよく音が回ってきていたとか,弦楽器は「塊」という感じで聞こえた,と言っていた。
演奏はなかなかいい雰囲気が出ていたように思う。本番特有の高揚感によりテンポがかなり先に行く場面もあったが,これも音楽の要求とかけ離れているわけではないのでそれほど気にならなかった(弾くのは大変だったが)。特殊楽器の響きの面白さも客席によく伝わったのではないだろうか。映画にも使われた第二ワルツはサックス陣の当然の名演により客席からブラヴォーが出た(この曲は組曲全曲終了後にアンコールで再演)。クリアさが要求される部分も本番ではけっこううまいこといったように思う。
個人的にはこの曲が今回の演目で最もヤバイと感じていた。細かい動きの精確さが要求される上,普段のショスタコ作品とは違った雰囲気を持っている。本当に最後の最後まであがくことになったが,その効果も多少あって本番でミスがほとんどなかったのでよかったと思う。
○交響曲1番
これまた難曲。オーケストレーションが薄い部分や,わざと難しく書いているようなところが多く,一瞬たりとも気を抜くことができない。「俺の曲を演奏できるのかい?」とショスタコに挑戦されているようなものだ(実際本当に挑戦していたのではないかと思う)。各楽章,各楽器に課題が満載だったが,本番は集中力が切れることなく演奏できたように思う。客席にはどのように伝わったのだろうか。
余談だが,いつもながら最後の練習後の長田氏の発言はいい。今回の要旨は「曲が始まってから何度か盛り上がるが,全部は発散せずにストレスを溜めに溜めて,(終楽章)練習番号44で一気に解放してください。」だった。毎年この最後の発言で一段階意欲が高まるような気がする。ダスビは毎年本番1~2週前の練習で必ず大きく乱れるが,これはショスタコーヴィチを演奏するという思いのオーバーフローみたいなものではないかと思う。そこから本番までのもって行き方はダスビというオケをよく知っている長田氏ならではのものではないだろうか。また,各メンバーの異常なまでの執着心も(私は)他では見ることがないものだ。もちろん,そこまでにちゃんと練習しているのはいうまでもないはずの,「あなたはもう十分できているから,それ以上やる必要ありませんよ。」と言いたくなるくらいできている人が,そこここでとりつかれたように練習している。こういうこともあって本番の一種異様な緊張感が生まれるのだと思う。
○スケルツォ
作品1。13才の時の作品。でもナメてはいけない。ひどく難しい。
CDはロジェストヴェンスキーのものしか出ていないようだが,あのテンポよりかなり速かったことが難度を増した。でもスケルツォ(速度表記はAllegretto)なんだから本来こうでなくてはいけないのだ(たぶん)。そのこともあって細かい動きがクリアに出なかったように思うが,実際どうだったのだろう。こういう場合はテンポを抑えるか,そのまま行くかの決断が必要だと思うが,私は解釈を妥協するよりその解釈を実現するべく努力をするほうを選びたい。
そうは言っても私自身はほとんど余裕がなく,なんとか音程とリズムに関して最低限の要求をこなしたとは言えるが,音楽的な詰めは不十分だった。次回以降はこのような情けないことがないように肝に銘じておこう。
※おまけ:打ち上げ
いつものごとく1次会の途中から記憶無し。2次会会場入りあたりから記憶復活。タバスコ一気男の記憶あり。楽器及び黒服の紛失無し。しかし数年前に比べるとおとなしくなったものだ。特定の人物がいなくなったためなのか,平均年齢の上昇によるものなのか。おそらく前者のような気がするが。
最後に,聴きにいらした方(や関係者の方)がいらっしゃいましたら,コメントなどいただけると嬉しいです。(←正しい日本語は「嬉しゅうございます」らしい。)
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